本データベースは、2011年3月11日に発生した東日本大震災で被災した宮城県沿岸部における無形民俗文化財を対象とした震災前と震災後の記録を収録したものです。調査事業は、宮城県地域文化遺産復興プロジェクト実行委員会からの委託を受け、2011年11月〜2013年2月にかけて、東北大学東北アジア研究センターによって実施されました。データベースのコンテンツは、地域住民からの聞き書き資料、写真や図版資料などから構成されています。「みやしんぶん」とは「宮城県における東日本大震災で被災した無形民俗文化財調査」の中から「宮」「震」「文」を取り出し、ひらがなにしたもので、調査事業の略称です。
東北大学東北アジア研究センターでは、2011年11月から2013年3月にかけて宮城県からの受託事業として、「東日本大震災に伴う被災した民俗文化財調査」を行いました。東日本大震災で被災した宮城県沿岸部の津波被災地の約23地区を対象とし、各地区=地域社会における民俗芸能・祭礼・年中行事・生業などの無形民俗文化財における震災前と被災実態、復興の過程を明らかにすることを目的とするものでした。被災地において多くの方々から聞き取りを行い、あるいは震災後の祭礼や行事に参与観察しながら民俗資料を収集してきました。
調査事業の体制は、東北大学、東北学院大学を中心として全国の大学から22名の研究者が参加しました。文化人類学・民俗学を基軸に、宗教学・環境社会学・地域研究者などの質的社会調査・フィールドワークを行う専門家です。これに学生による補助調査者10名にも加わってもらいました。約1.5年間の活動を通して合計154日間の調査を行い、延べ人数にして253人と面談したことになります。
その成果については以下の出版物として刊行されています。
- (1)高倉浩樹・滝澤克彦・政岡伸洋編2012
『東日本大震災で被災した宮城県沿岸部における民俗文化財調査(2011年度報告集)』東北アジア研究センター
- (2)高倉浩樹・滝澤克彦編2013
『東日本大震災で被災した宮城県沿岸部における民俗文化財調査(2012年度報告集)』東北アジア研究センター
- (3)高倉浩樹・滝澤克彦編2014
『無形民俗文化財が被災するということ―東日本大震災と宮城県沿岸部地域社会の民俗誌』新泉社
このうち、(1)と(2)については宮城県内の地域・市民図書館および全国大学図書館などに寄贈しており、利用することができます。またPDF版はインターネットで公開されており誰でもダウンロードできるようになっています。
(http://ir.library.tohoku.ac.jp/re/handle/10097/53891)
高倉浩樹(東北大学)・2013年12月24日
本データベースは、東日本大震災で被災した宮城県の無形民俗文化財の震災前・震災直後・震災後の過程についての情報を一般に公開し、研究・調査・教育上の利用に役立てることを目的としています。なお、調査事業で収集された聞き書き資料は400字詰め原稿用紙にして約1500枚、写真図版資料約250点になっています。
われわれがデータベースを構築するのは、そのことによって資料の利用の可能性を広げていくためです。膨大な量の情報は、本というかたちで編纂された形もさることながら、むしろ電子検索システムのなかでこそ、その価値を発揮しうると考えています。なぜなら利用者一人一人のもつ好奇心や背景となる知識、さらに自由な連想によって、情報の断片と断片は、編者の意図を超えて新たに結合し、新しい意味を創り出すからです。
その意味で、このデータベースは、宮城県における被災した無形民俗文化財に関心をもつ市民・学生・子ども・研究者が利用することを想定しています。検索システムを用いて、地区・祭礼・民俗芸能・生業などのキーワード毎に情報を収集することができますし、フリーワードによる検索も可能です。さらに関連する外部データベースとの連携も可能となっています。
このデータベースを用いることで、初等中等教育における震災学習、大学・研究機関における震災研究、さらに市民による調査のための情報収集を支援したいと私たちは考えています。さらに、市民・学校・研究機関による被災した無形民俗文化財の学習と調査研究が、最終的に津波被災地への関心を高め、地域活性化が促進されることを目指しています。
なお、本データベースの制作は、平成25年度文化庁「文化遺産を活かした地域活性化事業」による助成をうけました。
高倉浩樹(東北大学)・2013年12月24日